「体型カバー」という言葉を手放す。今の自分を心地よく見せるファッションのヒント
体型の変化。それは、多くの女性が経験する自然なことです。若い頃とは違う体のラインに戸惑いを感じたり、「これを着るとここが気になる」「あの頃の服はもう似合わないかもしれない」と、ファッションを楽しむことから少し距離ができてしまったりすることもあるかもしれません。
そして、書店やネットで目にする「体型カバー」という言葉。お腹を隠す、二の腕を細く見せる、脚を長く見せる…そういった情報を目にすると、「ああ、私はここを隠さなきゃいけないんだ」「ここがダメなんだ」と、なんだか自分を否定されているような気持ちになることはないでしょうか。
もちろん、視覚的な効果で心地よく見せる工夫は、ファッションの楽しみ方の一つです。ですが、「体型カバー」という言葉にあまりにも縛られてしまうと、おしゃれが「隠すこと」ばかりに終始してしまい、本来の「楽しむ」という気持ちから遠ざかってしまうことがあります。
「体型カバー」という言葉を、少しだけ手放してみませんか
「体型カバー」という言葉を手放してみる。それは、「隠す努力をやめる」ということではありません。そうではなく、「体型を隠すことに意識を集中しすぎない」「自分を否定するような考え方から少し離れてみる」ということです。
代わりに、今の自分を「心地よく見せる」ことに意識を向けてみるのはどうでしょうか。これは、体の「気になる部分」を隠すことに終始するのではなく、今の自分の体を心地よく受け入れながら、より素敵に見えるような視点を取り入れる考え方です。
今の自分を「心地よく見せる」ためのヒント
では、「心地よく見せる」ためには、具体的にどんなことを考えてみれば良いのでしょうか。いくつかヒントをご紹介します。
1. 「心地よさ」を一番の基準にする
まず何よりも大切なのは、着ていて心地よいと感じる服を選ぶことです。締め付けがきつい服、肌触りが苦手な素材、肩が凝るようなデザインの服は、どんなに「体型カバー」になると言われていても、着ている自分が窮屈な気持ちになってしまいます。
体が楽で、肌触りが良く、ストレスなく過ごせる服。それが、今の自分を一番心地よく見せるための土台になります。
2. 視線を惹きつけたい部分に焦点を当てる
「隠したい部分」に意識が向きがちですが、代わりに「ここを素敵に見せたいな」「ここなら自信を持てるな」と思える部分に焦点を当ててみるのはどうでしょうか。
例えば、
- 首元: 鎖骨がきれいに出るVネックやUネック、ボートネックなどは、顔周りをすっきりと見せ、女性らしい印象を与えます。ストールやネックレスで視線を上に集めることもできます。
- 手首: 七分袖や、袖をロールアップして手首を見せると、全体が華奢に見え、抜け感が生まれます。
- 足首: パンツの丈を足首が見えるアンクル丈にしたり、スカートやワンピースの丈をふくらはぎが見えるミモレ丈にしたりすると、軽やかな印象になります。
もちろん、「ここ!」と決めなくても大丈夫です。ただ、「隠す」ことだけでなく、「見せる(魅せる)」という視点も持ってみる、ということです。
3. 全体の「バランス」を意識する
体型変化と向き合う際、どうしても「太って見えるのでは」「野暮ったくなるのでは」といった不安がよぎることがあります。そこで大切になるのが、全体のバランスです。
- トップスとボトムスの組み合わせ: ゆったりしたトップスには、少し細身のパンツや、落ち感のあるスカートを合わせるとバランスが取りやすくなります。逆に、コンパクトなトップスには、ボリュームのあるワイドパンツやギャザースカートも素敵です。
- 丈感: アウターやトップスの丈と、ボトムスの丈のバランスで、全体の印象は大きく変わります。ウエスト位置を高く見せる、目線を上に集めるなど、錯覚を利用するのも一つの方法です。
- シルエット: ストレート、Aライン、コクーンなど、服には様々なシルエットがあります。自分の体にしっくりくる、心地よく見えるシルエットをいくつか知っておくと、服選びが楽になります。例えば、お腹周りが気になる場合は、ウエストを強調しすぎない、少しゆとりのあるAラインや、お腹周りにドレープ(ひだ)のあるデザインなどが心地よく感じられるかもしれません。
大切なのは、「この体型だからこれしかダメ」と決めつけず、色々なバランスを試してみることです。試着室で全身を鏡で見て、「あ、このバランス、なんだかいい感じ」と思えたら、それが今の自分にとって心地よく見えるバランスかもしれません。
4. 色や素材で視線を惹きつける
明るい色、きれいな色、華やかな柄、光沢のある素材、凹凸のある素材(ツイードやコーデュロイなど)は、人の視線を引きつけます。
「気になる部分」から自然と視線をそらす、という意味でも有効ですが、それ以上に、「着ていて楽しい」「気分が上がる」という理由で色や素材を選ぶことも大切です。心が弾むような服は、着ている人の表情も明るくし、それが一番の魅力となります。
何より大切なのは、自分を肯定すること
「体型カバー」という言葉は、私たちに「今のままではダメだ」と語りかけてくるように感じられることがあります。しかし、私たちの体は、年齢や経験と共に変化していくものです。それは決して「ダメ」なことではなく、生きてきた証であり、かけがえのない自分自身です。
ファッションは、その大切な自分自身を、より心地よく、より自分らしく表現するためのツールです。「カバー」という意識から少し離れて、「今の自分を、どうしたら一番心地よく、素敵に見せられるかな?」という視点を持ってみる。そうすることで、服選びがもっと自由で、もっと楽しいものになるはずです。
完璧に「隠す」必要はありません。「これでいいんだ」「今の私、なんだか心地よく見えるな」そう思えたら、それがあなたにとっての正解です。自分を肯定するファッションを、ゆるっと楽しんでいきましょう。