「似合うか」より「好きか」。自分を肯定する服選びのヒント
服を選ぶのが、ちょっと億劫になっていませんか
クローゼットの前で立ち尽くしたり、お店でどんな服を見たらいいか分からなくなったり。若い頃はファッションが好きだったのに、今は何を着てもピンとこない気がする。年齢や体型の変化とともに、そんな風に感じることが増えたという方もいらっしゃるかもしれません。
雑誌やSNSでは素敵な着こなしがたくさん紹介されています。でも、「自分に似合うのはどれだろう」「体型をカバーするにはどうすればいいんだろう」と考えているうちに、だんだん疲れてしまう。いつの間にか、ファッションが「楽しむもの」から「クリアしなければならない課題」のようになっていませんか。
「こうすれば着痩せする」「この年齢ならこう着るべき」「流行遅れは恥ずかしい」。私たちの頭の中には、いつの間にかたくさんの「こうあるべき」が溜まっていきます。それは、おしゃれを楽しむ上で知っておくと役立つ情報である一方で、私たちをがんじがらめにしてしまう可能性もあります。
「ゆるっとファッション手帖」では、そんな「こうあるべき」というプレッシャーを少し手放して、もっと自由に、自分を肯定しながらファッションを楽しむヒントをお届けしたいと考えています。今回は、「似合うかどうか」という基準から一旦離れて、「好き」という気持ちを大切にしてみる服選びについて考えてみましょう。
なぜ私たちは「似合うか」を気にしすぎるのか
「似合う」かどうかを考えることは、自分をより魅力的に見せるための大切な視点であることは間違いありません。でも、私たちは必要以上にこの「似合う」に縛られていないでしょうか。
- 年齢とともに体型が変化し、「今まで似合っていたものが似合わなくなった」と感じる。
- 周りの目や社会的なイメージを気にして、「〇〇歳ならこうあるべき」という無意識のプレッ念がかかる。
- トレンドの変化が早く、「何が正解か分からない」と混乱する。
- メディアやSNSの情報に振り回され、「完璧な着こなし」を目指そうとしてしまう。
これらの要因が重なり、「自分に似合うものが分からない」「おしゃれをする自信がない」という気持ちにつながることがあります。そして、自信がないからこそ、さらに「失敗したくない」「似合わないと思われたくない」という気持ちが強くなり、「似合うかどうかの判断」ばかりに意識が向きがちになるのです。
「似合う」より先に、「好き」を大切にしてみませんか
ファッションにおける「似合う」とは、実はとても曖昧で変化しやすい基準です。体型や肌の色、髪型だけでなく、TPOやその時の気分によっても「似合う」と感じるものは変わります。また、「似合う」かどうかは他人の評価に左右される側面もあります。
それに対して「好き」という気持ちは、あなた自身の内側から生まれる、とても純粋でパワフルな感覚です。「この色を見ると気分が上がる」「このデザイン、理屈抜きで惹かれる」「この素材、触っているだけで心地よい」。
「好き」を服選びの軸にすることには、こんなメリットがあります。
- ファッションを選ぶことが楽しくなる: 「似合うか」という評価基準ではなく、「好きか」という感情がスタートになるため、服選びそのものがゲームのようにワクワクするものに変わります。
- 自分らしさが見えてくる: 流行や他人の評価に左右されない「好き」を追求することで、あなたの個性や本当に心地よいスタイルが自然と見えてきます。
- 自分を肯定できるようになる: 「誰かにどう見られるか」ではなく、「自分がどう感じるか」を大切にすることで、自分自身の感覚や好みを肯定できるようになります。これは、ファッションだけでなく、日々の自信にも繋がるはずです。
- 失敗を恐れなくなる: 「好き」で選んだ服は、たとえ着こなしが難しくても、「これも自分の好きなものを見つける旅の一部だ」と前向きに捉えやすくなります。完璧を目指さない「ゆるっと」した姿勢が生まれます。
「好き」を見つけるためのヒント
では、どうすれば自分の「好き」を見つけたり、大切にしたりできるのでしょうか。難しく考える必要はありません。日常生活の中で、小さな「好き」に意識を向ける練習をしてみましょう。
- 昔の自分を振り返ってみる: 学生時代や20代の頃など、ファッションを楽しんでいた頃のアルバムを見返したり、当時の好きなブランドやアイテムを思い出してみたりしてください。そこに、今でも通じるあなたの「好き」の原点があるかもしれません。
- 理屈抜きで「いいな」に注目する: お店で服を眺めたり、街を歩く人を見たり、SNSでファッション情報に触れたりする中で、「あ、なんかいいな」と直感的に心が動いたものに注目してみてください。色、形、素材、シルエット…なぜ惹かれたのか分析する必要はありません。ただ、「好き」という感覚を拾い上げる練習です。スマートフォンのメモ機能に書き留めたり、スクリーンショットを撮っておいたりするのも良い方法です。
- 試着を「義務」にしない: 気になる服があったら、まずは試着してみましょう。「買わなきゃいけない」「似合わなかったらどうしよう」というプレッシャーは不要です。「ただ着てみたいから着てみる」という軽い気持ちでOKです。鏡に映る自分を見て、「この服を着ると、どんな気持ちになるかな?」と自分の内側に問いかけてみてください。
- 「失敗した買い物」から学んでみる: クローゼットの中に、「しまったまま着ていない服」や「一度着たきりの服」はありませんか。それらを「失敗」と決めつけずに、なぜ着なくなったのか、どんな点が自分にとって心地よくなかったのかを冷静に分析してみましょう。それは、あなたの「好き」ではないものを知るための大切なヒントになります。次に服を選ぶときに、同じような失敗を避けることに繋がるはずです。
「好き」な服を、ゆるっと着てみる
「好き」を見つけたら、次はそれを着てみましょう。でも、ここでも完璧を目指す必要はありません。
例えば、あなたが「このスカートの色が好き!」と感じたとします。でも、「この色のスカート、どうやって着こなせばいいんだろう…」と立ち止まってしまうかもしれません。そんな時は、難しく考えずに、まずは手持ちの定番アイテム(白Tシャツやシンプルなニット、デニムなど)と合わせてみてください。プロのモデルさんのような完璧な着こなしにならなくても大丈夫です。「大好きな色を着ている自分」を感じてみること、それが何より大切です。
体型が気になる部分があっても、無理に隠すことばかり考えなくて良いのです。「好き」な服を着ているという心の弾みが、あなたの表情を明るくし、それが一番の魅力になることもあります。もし不安なら、ストールやアクセサリーなど、他の「好き」な小物を少しだけ足してみるのも良いでしょう。
「似合う」かどうかは後からついてくることもあります。「好き」な服を何度も着ているうちに、自然と心地よい着こなし方が見つかったり、その服があなた自身の一部のように馴染んできたりするものです。
まとめ
服を選ぶ時、「似合うかな」と迷うのは自然なことです。でも、その基準に縛られすぎて、ファッションを楽しむ気持ちを失ってしまうのはもったいないことです。
年齢や体型が変化しても、あなたの「好き」という感覚は決して失われることはありません。むしろ、人生経験を重ねた今だからこそ気づける、深く心地よい「好き」があるはずです。
「完璧な着こなし」や「誰かに褒められる服」を目指すのではなく、「自分が心地よいと感じる服」「着ていると気分が上がる服」を大切に選んでみてください。
あなたの「好き」を軸にしたファッションは、何よりもあなた自身を肯定してくれるはずです。まずは小さな「好き」から、肩の力を抜いて、ゆるっと始めてみませんか。服選びの時間が、再びあなたにとって楽しいものになることを願っています。