サイズにとらわれない。試着室で心地よく服を選ぶヒント
試着室での「モヤモヤ」から抜け出す
服屋さんで気になる一着を見つけて、いざ試着室へ。ところが、試着を終える頃にはなんだか気分が落ち込んでしまう。そんな経験はありませんか。
「前に着ていたサイズが入らない…」 「体のラインが思ったより出てしまうな」 「店員さんの『お似合いですよ!』が信用できない…」
年齢を重ねたり、体型が変化したりすると、以前と同じ感覚で服を選ぶのが難しくなることがあります。特に試着室という小さな空間では、自分の体とじっくり向き合うことになるため、ついネガティブな部分にばかり目が行きがちです。
でも、ファッションは本来、自分自身を表現したり、毎日を心地よく過ごしたりするためのもの。「こうあるべき」という理想や、過去の自分にとらわれて、服選びが苦痛になってしまうのはもったいないことだと思います。
ここでは、試着室でのモヤモヤを手放し、今の自分に心地よくフィットする一着を見つけるための、いくつかのヒントをお伝えします。サイズや体型といった固定観念から少し離れて、「ゆるっと」服を選ぶための新しい視点を見つけてみませんか。
サイズ表示は「目安」と考える
まず、サイズ表示にとらわれすぎるのをやめてみましょう。S、M、Lといったサイズや、ウエスト何センチ、といった数字は、あくまで服を作る上での基準の一つです。
ブランドによってサイズの基準は異なりますし、同じブランドでもデザインや素材によってフィット感は全く違います。例えば、ゆったりとしたシルエットの服なら普段より一つ下のサイズが心地よいかもしれませんし、伸縮性のない素材の服なら普段より一つ上のサイズの方が楽に過ごせるかもしれません。
大切なのは、タグについているサイズ表示ではなく、実際に着てみて「今の自分の体にとって心地よいかどうか」です。サイズ表示にとらわれず、気になる服はまず試着してみる。そして、可能であれば前後サイズも試着して、一番しっくりくるものを選ぶのがおすすめです。店員さんに試着したいサイズを伝えるときも、「普段はMですが、このデザインならLも試してみたいです」といった形で気軽に相談してみましょう。
「心地よさ」を最優先の基準にする
試着室で服を選ぶとき、以下のポイントを「心地よさ」の視点からチェックしてみてください。
- 体のラインを拾いすぎないか: ピタッとしすぎる服は、体の変化が気になりやすいだけでなく、動きを制限することもあります。少しゆとりがあり、体の線をきれいに見せてくれる、心地よいシルエットを選びましょう。
- 動きやすいか: 腕を上げ下げしたり、肩を回したりしてみてください。突っ張り感なくスムーズに動けるかどうかが大切です。普段の生活での動きをイメージしてみましょう。
- 座った時にきつくないか: デスクワークや電車での移動など、座っている時間は意外と長いものです。試着室に椅子があれば、一度座ってみてください。ウエストや太もも周りが締め付けられないかを確認します。
- 肌触りは心地よいか: 素肌に触れる感触も重要な「心地よさ」の要素です。チクチクしたり、ゴワゴワしたりしないか、着ていてリラックスできる素材かどうかも確認しましょう。
これらの「心地よさ」は、サイズやトレンドといった基準とはまた違う、自分自身の感覚に基づいた基準です。この感覚を大切にすることで、数字や流行に振り回されずに、今の自分に本当に合う服を見つけやすくなります。
「体型カバー」という言葉を手放してみる
年齢や体型変化の悩みに向き合う中で、「体型カバー」という言葉をよく耳にするかもしれません。もちろん、気になる部分を上手にカバーする着こなしは素晴らしいテクニックです。
しかし、「カバーしなくては」という考えにとらわれすぎると、服選びの選択肢を狭めてしまったり、「隠すこと」が目的になってしまったりすることがあります。
体型カバーという視点から少し離れて、「今の自分の体を、どうしたら一番心地よく、きれいに見せられるかな?」というポジティブな視点に切り替えてみましょう。例えば、気になる二の腕を隠すのではなく、袖のデザインが素敵なものを選ぶ、というように発想を変えてみるのです。
服は、体の「欠点」を隠すためのものではなく、今の自分の体を「心地よく包み」「魅力的に見せてくれる」パートナーだと考えてみてください。試着室では、ネガティブな部分に目を向けるのではなく、「この服のここが好き」「この服を着ると気分が上がるな」といった、心地よい感覚や肯定的な気持ちに意識を向けるように心がけてみましょう。
試着室での「自分」との向き合い方
試着室は、服と向き合う場所であると同時に、自分自身と静かに向き合う場所でもあります。そこでネガティブな気持ちになってしまうのは、外からの評価や「こうあるべき」という理想に無意識のうちにとらわれているからかもしれません。
- 他人と比べない: 街で見かけるおしゃれな人や、若い頃の自分と比べる必要はありません。今のあなたの体は、あなたが積み重ねてきた時間そのものです。その体を大切に、愛おしく思ってあげてください。
- 「似合う/似合わない」を絶対視しない: 「似合う」とは、その服を着たときにあなたがどう感じるか、そしてどう見せたいかによって変わる曖昧なものです。世間一般の「似合う」にとらわれず、「私はこの服を着ていて心地よい」「なんだかいい気分」と感じるかどうかを基準にしてみましょう。
- 店員さんの意見は参考に: 店員さんは販売のプロですが、あなたの体やライフスタイル、そして最も大切な「あなたの気持ち」を全て理解しているわけではありません。もちろん、プロの視点からのアドバイスは参考になりますが、最終的に決めるのはあなた自身です。「素敵ですね」と言われても、自分で着てみて心地よくなければ、無理に購入する必要はありません。
試着室を出る時に大切なのは、完璧な着こなしをすることでも、店員さんを満足させることでもありません。あなたが「この服を着てみたい」「この服だと心地よく過ごせそう」と、心から思えるかどうかです。
まとめ:心地よさを味方につけて、服選びをもっと自由に
試着室での服選びは、サイズや体型といった分かりやすい基準に頼りがちですが、それらにとらわれすぎると、服を着る本来の楽しさを見失ってしまうことがあります。
今日から、試着室では「サイズ」や「体型」といった数字や外からの評価よりも、「心地よさ」という自分自身の感覚を一番の味方につけてみませんか。体に締め付け感はないか、心はワクワクするか。その感覚こそが、今のあなたに本当に似合う、そして長く大切に着られる一着を見つけるための羅針盤になります。
完璧である必要はありません。時にはサイズ選びに失敗したり、やっぱり着心地が悪かったりすることもあるかもしれません。でも、それも「ゆるっとファッション」の一部です。試行錯誤しながら、今の自分に心地よい服との付き合い方を見つけていく過程を、ぜひ楽しんでください。
試着室での時間が、自分を否定する時間ではなく、今の自分を大切に受け入れ、心地よさを追求する、豊かな時間となりますように。