「これ、似合わないかも?」迷った服との新しい付き合い方。完璧じゃなくていい理由
クローゼットで手が止まる「あの服」
クローゼットを開けたとき、「これ、なんとなく似合わないかも?」と感じて、結局着ないままになっている服はありませんか。もしかしたら、少し前に買ったけれどイメージと違ったのかもしれませんし、あるいは若い頃にはよく着ていたけれど、今の自分にはしっくりこないのかもしれません。
その服を前にすると、ちょっぴり残念な気持ちになったり、「もったいないな」「私には似合わないんだな」と自分を否定する気持ちになったりすることもあるかと思います。
ファッションには、「こう着れば正解」「この色や形は似合う人にしか許されない」といった、知らず知らずのうちに私たちを縛るような考え方が存在します。特に年齢や体型の変化を感じ始めた頃には、「もうこんな服は似合わない」「隠さなきゃ」といった声が、自分の中から聞こえてくるように感じることもあるかもしれません。
でも、「似合う」の基準って、誰かが決めたものでしょうか。そして、すべての服が完璧に「似合っている」必要はあるのでしょうか。
「似合わないかも」と感じる理由を、完璧主義を手放して考えてみる
なぜ、「なんとなく似合わない」と感じてしまうのでしょう。その背景には、いくつかの理由があるかもしれません。
- 「過去の自分」との比較: 以前の体型や雰囲気に似合っていた服が、今の自分にはしっくりこない。でも、「あの頃は着られたのに」という思いがあると、今の自分に似合わないことをネガティブに捉えてしまうことがあります。
- 「こうあるべき」という固定観念: 「この年齢ならこういう服を着るべき」「この体型なら隠すべき」といった、世間や自分の中にある「こうあるべき」にとらわれているのかもしれません。
- 自分を厳しく見すぎている: 鏡に映る姿の、気になるところばかりに目がいってしまい、服全体の雰囲気や、着たときの自分の表情まで見えていないのかもしれません。
- 「似合う=欠点がない」という思い込み: 「似合う」ということは、自分の体型などの「欠点」をすべてカバーできている状態だと思い込んでいませんか。少しでも気になる部分があると、「似合わない」と判断してしまうのかもしれません。
これらの理由を一つ一つ分析して「完璧な答え」を出す必要はありません。ただ、「ああ、私はそう考えていたのかもしれないな」と、自分の心の癖に気づくだけでも、少し肩の力が抜けることがあります。
「完璧に似合わせる」より「今の自分が心地よく着られるか」を大切に
ファッションを「完璧に似合っている状態を目指すもの」と考えると、苦しくなってしまうことがあります。体型も流行も常に変化しますし、何より私たち自身の気分やライフスタイルも日々変わっていくからです。
そこで、「似合う」の基準を少しだけゆるめて、「今の自分が、それを着て心地よくいられるか」という視点を大切にしてみませんか。
たとえ誰かの基準で「完璧に似合っている」と言えなくても、自分がその服を着ていて気分が上がったり、気持ちが軽やかになったりするのであれば、それは「今の自分に心地よい服」です。そして、「心地よい」は、何よりも大切な「似合う」の基準だと、私たちは考えます。
「似合わないかも」と感じる服と、新しい付き合い方をするヒント
クローゼットに眠る「なんとなく似合わないかも」と感じる服を、すぐに手放す必要はありません。少し視点を変えて、新しい付き合い方を考えてみるのはいかがでしょうか。
まずは「着てみる」ハードルを下げてみる
- 部屋着として袖を通す: 外出着としては気が進まなくても、家の中で着てみるのはどうでしょう。リラックスした状態で、その服の着心地や、動いたときの感じを確かめてみてください。鏡の前で立ち止まるのではなく、家事をしたり、本を読んだりしながら、「心地よいか」を感じてみます。
- 近所の散歩着にしてみる: 誰かに見られるかも、という意識を少しだけ持ちつつ、でも「ご近所だから大丈夫」とハードルを下げて着てみます。外の光の下で見え方が変わることもありますし、実際に歩いてみて着心地を再確認できます。
「今の自分」に合わせて少しだけ調整してみる
完璧に似合わせるためではなく、「今の自分が、この服を着て心地よくいられるか」を基準に、少しだけ調整を加えてみるのはどうでしょう。
- 組み合わせを変えてみる: いつも同じように合わせていたボトムスやトップスではなく、全く違うテイストのアイテムと組み合わせてみてください。意外な組み合わせが、「これなら心地よく着られるかも」という発見につながることがあります。
- 小物で雰囲気を変える: 靴、バッグ、アクセサリー、ストールなど、小物を変えるだけで服の印象はガラリと変わります。例えば、甘すぎるデザインの服に辛口のブーツを合わせてみたり、シンプルな服に大ぶりのアクセサリーを足してみたり。これも、「今の自分」に心地よいバランスを探す遊びです。
- インナーや羽織りで調整する: 首元の開きが気になるなら、タンクトップやレースのインナーを重ねてみたり、体のラインが気になるなら、ゆったりしたカーディガンやシャツを羽織ってみたり。服そのものに手を加えるのではなく、周りのアイテムで「今の自分にとっての心地よさ」を調整します。
どうしても心地よくない場合は、手放す選択も大切
色々と試してみたけれど、やはりどうにも気分が乗らない、着ていて落ち着かない、体が窮屈に感じる…そんな場合は、無理をして持ち続ける必要はありません。
「もったいない」という気持ちがあるかもしれませんが、クローゼットの中で場所を取り、見るたびにネガティブな気持ちにさせるのであれば、手放すことで心もクローゼットも軽くなります。誰かに譲る、フリマアプリに出してみる、リサイクルに出すなど、手放し方も色々あります。
これは決して失敗ではありません。その服があったからこそ、「今の自分にとっての心地よさ」に気づくきっかけになった、と前向きに捉えてみましょう。
ファッションは自分を縛るものではなく、自分を応援するもの
「似合わないかも」と感じる服と向き合う時間は、自分自身の変化や、ファッションに対する自分の本音を知る大切な機会になります。
完璧に「似合っている」ことだけがファッションの楽しさではありません。たとえ誰かにとっての「正解」から外れていても、自分が心地よく、自分らしいと感じられる服を選ぶこと。それが、私たち自身の心を肯定し、日々を心軽やかに過ごすための、ゆるっとしたファッションとの向き合い方なのではないでしょうか。
クローゼットの「あの服」が、あなたが「完璧じゃない自分」を認め、「心地よさ」を大切にするための一歩を踏み出すきっかけになってくれたら、とても嬉しいです。