おしゃれは「心地よさ」が一番の基準。今の自分と服との新しい付き合い方
ファッションの「心地よさ」を大切にしていますか?
「今日、何を着よう?」 毎朝、クローゼットの前でそう考えたとき、どんなことを基準に服を選んでいますか。
「これ、流行っている色かな?」 「この服、私の体型に合っているかしら?」 「周りの人はどう思うだろう?」
もしかしたら、そんな風に、外側の基準や誰かの評価を気にしながら服を選んでいて、少し疲れてしまっているかもしれません。若い頃は好きだったおしゃれも、年齢や体型が変わるにつれて、「何が似合うのか分からない」「もう楽しめないのかも」と自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
「ちゃんとおしゃれしなきゃ」「年齢に合った服を選ばなくちゃ」――そんな「こうあるべき」というプレッシャーに、知らず知らずのうちに縛られていませんか。
「ゆるっとファッション手帖」で提案したいのは、そんな「おしゃれの基準」を少しだけ変えてみることです。それは、「似合うか」や「流行か」よりも、「心地よいか」を一番大切にするファッションとの向き合い方です。
「心地よさ」を基準にするということ
ここでいう「心地よさ」には、二つの側面があります。
一つは、物理的な心地よさです。
- 肌触りが良いか
- 締め付け感はないか
- 動きやすいか
- 肩や首が凝らないか
- お手入れは楽か
もう一つは、内面的な心地よさです。
- 着ていて気分が上がるか、安心できるか
- 自分らしいと感じられるか
- なんだか自信が持てるか
- 心が満たされるか
この二つの「心地よさ」を服選びや着こなしの基準にしてみることで、ファッションは「頑張るもの」から「自分をいたわるもの」「自分を満たすもの」へと変わっていくかもしれません。
なぜ「心地よさ」が大切なのでしょうか
「おしゃれ」というと、どうしても「いかに素敵に見えるか」「スタイルが良く見えるか」といった、見た目や外からの評価に意識が向きがちです。もちろん、そういった視点もファッションの楽しみの一つです。
しかし、「心地よさ」を最優先にすると、視点が大きく変わります。
- 自分自身の感覚を大切にできるようになります 他人の目や社会的な「べき」から解放され、「自分がどう感じるか」という内側の声に耳を傾ける習慣がつきます。
- 今の自分を受け入れやすくなります 年齢や体型が変化しても、「前の自分と比べて」と落ち込むのではなく、「今の自分が一番心地よくいられる服はどれだろう?」という前向きな視点を持てるようになります。
- ファッションが自分を満たすものになります 我慢して窮屈な服を着たり、着慣れない流行を無理に取り入れたりするのではなく、着るたびに心がホッとしたり、気分が上がったりする服を選ぶことで、ファッションが日々の生活を豊かに彩ってくれます。
- 結果として、「自分らしい」魅力が引き出されます 無理に着飾るのではなく、心地よい服を着ていると、自然とリラックスした良い表情になり、内側からの自信が生まれます。それが、飾らないけれど魅力的な「自分らしさ」につながっていくのではないでしょうか。
「心地よさ」で服を選ぶためのヒント
では、具体的に「心地よさ」を基準に服を選ぶにはどうしたら良いでしょうか。いくつかヒントをご紹介します。
ヒント1:試着では「感覚」を大切に
服を試着するとき、「似合うかな?」「変じゃないかな?」と鏡ばかり見ていませんか? これからは、鏡を見るのと同じくらい、「着ていてどんな感覚がするか」に意識を向けてみてください。
- 「この生地、肌触りが気持ちいいな」
- 「腕を上げ下げしても窮屈じゃない」
- 「なぜか分からないけれど、これを着るとワクッとする」
- 「この色、見ていると落ち着くな」
反対に、「なんだかチクチクする」「締め付けられて苦しい」「落ち着かない感じがする」といった、少しでもネガティブな感覚があれば、たとえ見た目が素敵でも、一度立ち止まって考えてみましょう。後々着なくなってしまう可能性が高いかもしれません。
ヒント2:手持ち服を「心地よさ」で仕分けしてみる
クローゼットにある服を、「着ていて心地よいか」という基準で見直してみるのもおすすめです。
- 着るといつも気分が良い服
- 楽なのに、なぜか自信が持てる服
- 肌触りが大好きで、つい手に取ってしまう服
そんな「心地よい服」と、そうではない服に分けてみましょう。「いつか着るかも」「高かったから」「似合うと言われたから」といった理由で置いてあるけれど、着ると窮屈だったり、気分が乗らなかったりする服は、もしかしたら手放すサインかもしれません。クローゼットを「心地よい服」で満たしていくことが、ゆるっとおしゃれへの近道です。
ヒント3:シルエットや素材選びは「リラックスできるか」で考える
体型や年齢の変化で、今まで似合っていたシルエットがしっくりこなくなったと感じることもあるかもしれません。そんな時は、「体型を隠す」ことばかりに囚われず、「着ていてリラックスできるか」「体のラインを拾いすぎず、自然なシルエットに見えるか」という視点で素材や形を選んでみましょう。
- 締め付けず、体のラインを拾いすぎない、ゆったりとしたシルエット(Aラインや、ストンとしたIラインなど)
- ストレッチ性があって動きやすい素材
- 肌触りが優しい天然素材や、シワになりにくいお手入れ簡単な素材
「おしゃれに見えるけど窮屈な服」よりも、「着ていて心地よく、自分らしくいられる服」を選ぶことで、自然と素敵な着こなしになることも多いものです。
ヒント4:「完璧」を手放し、日々に寄り添う
「おしゃれ=気合を入れて着飾ること」という考えを手放してみましょう。普段着においては、少しくらいシワがあっても、カジュアルすぎても、自分が心地よくいられるなら大丈夫、くらいの気持ちで良いのです。
例えば、ちょっとした近所へのお出かけなら、リラックスできるカットソーに履き心地の良いパンツ、お気に入りのスニーカーでも十分です。そこに、着けるとなんだか気分が上がるアクセサリーを一つ足してみる、というように、「心地よさ」をベースに小さなプラスを積み重ねていくのがおすすめです。
「心地よい」を積み重ねて、私らしいファッションを
おしゃれの基準を「心地よさ」にシフトすることは、すぐにできることかもしれませんし、少し時間がかかることかもしれません。大切なのは、完璧を目指すのではなく、まずは一つか二つ、「着ていて心地よい服」を選んでみることです。
その服を着て過ごす中で、「あぁ、やっぱりこの服は気持ちが良いな」「これを着ていると落ち着くな」という感覚を味わってみてください。その感覚を頼りに、少しずつ、クローゼットを「心地よい」と感じる服で満たしていきましょう。
年齢や体型は変化します。流行も移り変わります。「こうあるべき」という外からの声に振り回されるのではなく、自分自身の内側にある「心地よい」という感覚を信じてみてください。
そうすることで、ファッションはもっと自由で、もっと自分らしく、そして何より、自分を肯定するための優しいツールになってくれるはずです。肩の力を抜いて、ゆるっと、心地よいファッションを楽しんでいきましょう。